ネズミ類は無症状でも人間は発症

 狂犬病については長らく日本での感染例は確認されてはいないが、エキゾチック・アニマルからの感染だと確認されているものがある。レプトスピラ症だ。

 レプトスピラ症はレプトスピラ菌の感染によって発症する病気で、自然宿主であるネズミ類(げっ歯類)に感染して症状をあらわすことはない。ところが、人間に感染すると風邪のような発熱のほか、黄疸、出血、腎障害といった症状を発症する。1970年代前半までは日本でも年間50人程度が亡くなるほど身近な感染症だったが、菌を媒介するネズミの駆除が進み、環境衛生が向上したため、狂犬病のように撲滅こそされていないものの、その発生数は激減した。

 しかし、エキゾチック・アニマルがペットとして飼われるようになって、レプトスピラ症のリスクは高まっていると言われている。2005年にはペット輸入販売業者の従業員に、ペット用に輸入されたアメリカモモンガからレプトスピラ菌が感染。発熱やだるさを感じ、急性腎不全、肝機能障害といったレピトスピラ症特有の症状があらわれた。

 現在、げっ歯類の輸入に際しては届け出制が導入されており、感染症の安全性を証明する輸出国政府が発行した衛生証明書の提出が義務付けられている。もし、げっ歯類を飼う場合には、安全性が確かめられたものかどうかをペットショップで確認していただきたい。

イヌやネコだってリスクがないわけではない

 このようにエキゾチック・アニマルが飼われるようになって、人獣共通感染症のリスクは高まっているわけだが、古くから飼われているイヌやネコだってリスクがないわけではない。その代表例と言えるのがQ熱とトキソプラズマだ。

 人間が発症すると発熱、倦怠感、リンパ節の腫れなどの症状があらわれるQ熱は、昔からウシやヒツジといった家畜の感染症として知られていた。ただし、家畜に接したことのない人もQ熱にかかっていたため、イヌやネコを対象に調査を行ったところ10~15%が過去に感染していたことが明らかになっている。Q熱の原因となるコクシエラ菌は動物の唾液、糞、尿に含まれるため、ペットとの過度なスキンシップや、糞尿を処理する際に感染するリスクがあるのだ。

 また、ネコの糞便を介して感染することがあるトキソプラズマは、健康な成人であれば症状があらわれることはほとんどないが、過去に感染したことがなく、免疫を持たない妊婦が感染すると胎児への影響が心配される。妊娠初期に胎盤を通じてトキソプラズマが胎児に移行すると流産してしまうことさえある。愛猫とのスキンシップは安らぎの時間を与えてくれるかもしれない。しかし、胎児へのリスクを考えると、妊娠を考えている女性はネコとの接触は控えてもらったほうがいいだろう。

 ペットを溺愛するがあまり、口移しでエサを与えたり、同じベッドで寝る飼い主がいるが、動物だけでなく人にも感染する人獣共通感染症のリスクを考えると、過度の接触は控えていただきたい。

(文・斉藤勝司)

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