ペットの溺愛がもたらす人獣共通感染症にご用心

盲目のオジロジカ「ディリー」は牧場で生まれたが、母親が子育てを放棄したため、オハイオ州の獣医師メラニー・ブテラに引き取られた。今は自分専用の部屋で「まるでお姫様のように」暮らす。 写真=Vincent J. MusiDave Yoder
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 近年ではイヌ、ネコにはない野性味が魅力的に映るのだろうか、かつては一般家庭で飼育対象になることのなかった野生動物が、エキゾチック・アニマルと呼ばれて飼われるようになっている。正規の輸入ルートであれば感染症の侵入を水際で食い止める検疫が実施されているだろうが、中には生息地で密猟された後、正規の輸入手続きを経ずに日本に持ち込まれたものもあり、人獣共通感染症のリスクは増しているようだ。

長らく発生していない狂犬病だが……

 ペットと人間がともに感染する人獣共通感染症といって、まず代表例として思い浮かぶのは狂犬病だろう。狂犬病ウイルスの感染により、中枢神経が侵され、沈うつ、興奮、麻痺といった症状があらわれ、ひどい場合は死に至ることもある。

 狂犬病という名前の影響で、イヌからしか感染しないと思われるかもしれないが、すべてのほ乳類が感染する可能性がある。日本では1950年に狂犬病予防法が制定され、予防接種が徹底されたため、1956年に人とイヌで、1957年にネコで発生して以来確認されていない。しかし、世界に目を向けてみると狂犬病は増加傾向にあり、毎年3万5000~5万人(WHO調べ)が亡くなっている。

 それだけに感染した動物が海外から持ち込まれるのを水際で食い止めることが求められる。かつてはイヌだけに限られていた検疫が、2000年からネコ、キツネ、スカンク、アライグマにも適用されているが、密輸された動物は検疫の網にかかってこない。

 例えば、南米ではコウモリを介して狂犬病が拡がっているため、2003年に輸入が禁止されているものの、今なお一部のペットショップで売られている。その多くは日本国内で繁殖された安全な個体だろうが、密輸されたものがないとは言い切れず注意が必要だ。

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