「不眠=不眠症」ではありません
日本人の5人に1人が睡眠の問題を抱え、睡眠に悩む人が増えているという。なかでも真っ先に自覚しやすいのは「寝つきが悪い」「夜中に何度も起きる」「一度目が覚めると眠れない」など「眠れない」ことだ。そのため、すぐ不眠症と考えがちだが、「不眠=不眠症」と短絡的に考えるのは間違っている。それどころか、逆に症状を悪化させるリスクすらあるという。
こう注意をうながすのは『8時間睡眠のウソ。』(日経BP社)の著者で、『睡眠薬の適正使用・休薬ガイドライン』(じほう)の編者である国立精神・神経医療研究センターの睡眠のスペシャリスト、三島和夫部長だ。
「多くの睡眠障害で不眠症状がみられるのは確かです。ですが、ひと口に睡眠障害といっても、細かくみれば100種以上の疾患に分けられて、不眠症はそのひとつに過ぎません。不眠症ではないにもかかわらず、不眠症として対処や治療をしてしまうと、逆に睡眠障害を悪化させるものも少なくないため、注意が必要です」
たとえば、不眠症として治療すると悪化する代表的な例に「睡眠時無呼吸症候群」や「むずむず脚症候群」がある。
睡眠時無呼吸症候群は、成人の約1~4パーセント、65歳以上の約10パーセントにみられるとされる。眠っている間に筋肉が弛緩し、舌がのどをふさいで時々呼吸が止まる。そのせいで睡眠の質が低下し、日中に強い眠気が起こるので、「夜によく眠れない」と思いがちだが、不眠症の治療に使う睡眠薬の一部は筋肉を弛緩させるため、逆に無呼吸が悪化することがある。
むずむず脚症候群は、その名の通り「むずむずする」「虫が這う感じがする」「突っ張る」などの不快感が脚に現れて目が覚めてしまう病気。成人の1~3パーセントにみられ、これも結果として不眠を招くが、睡眠薬は効果がないばかりか、むずむず感が解消されないまま眠気だけが強くなって苦痛が増すことも。
また、「うつ病」も睡眠障害を起こしやすい病気。うつ病は、一生のうちに日本人男性の15人に1人、女性の10人に1人がかかり、不眠症状を呈する人はその9割にものぼる。

三島和夫(著)、川端裕人(著)
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