第73回 頭をいくつもくっつけた奇妙な虫を発見

 モンテベルデの森へ引っ越してから1年が過ぎた。研究対象にできる森は広く深く続いているが、今のところ、ぼくの主な調査場所は家のドアから半径50メートル圏内。森の奥へ調査に行くことはほとんどない。ピソちゃん(ハナジロハナグマ)がうろうろするように、ぼくもラボの周りをうろうろしている。

 身近でも研究対象に事欠かないというのが一番大きな理由だが、同時にぼくは、身近なところからコツコツと調査することを心がけてもいる。
 近いから研究がしやすいし、日々の変化もわかりやすい。それにぼくが住んでいるバイオロジカルステーションは、ちょうど人工的なものと自然との境界なので、人々の活動が自然に及ぼす影響も見やすい。そこで得られる情報は、やがて国立公園や自然保護区など原生の自然の保全保護につながるだろう。

 そんなこんなで今回紹介するのは、ぼくの身近な自然のなかでもさらに身近な、家のドアから5メートル圏内で出会った虫たち。

 たとえば上の写真は、研究対象のひとつで、カメノコハムシ(ジンガサハムシ)の一種の幼虫を横から見たところ。葉っぱにくっついている部分が本体で、そこから長い尾のようなものがエビ反り状態に伸びている。
 この「尾」を立てたのが下の写真。体が大きくなるたびに脱皮した、その抜けがらを器用につなげ、盾代わりにしている。よく見ると、トーテムポールのように、顔が並んでいる!

 小さいけれど、身近な昆虫たち。身近なところから気づき、その次を理解していく。虫たちは、そうして森の奥へ奥へと少しずつ、わたしたち、ぼくたちをいざなってくれるのである。

 次のページでも、半径5メートルの虫たちを紹介します。今週もピソちゃんも、半径5メートル内にやってきましたので、最後にどうぞ!

カメノコハムシの一種(甲虫目:ハムシ科:トゲハムシ亜科:カメノコハムシ族)の幼虫
A larva of tortoise beetle, Calyptocephala sp.
葉を食べているところ。おしりのVの字は、しっぽのように動く。後ろから敵が近付くと、盾をサッと持ちあげ、後ろからの攻めに備える。盾の長さは13 mm。
体長:7 mm 撮影地:モンテベルデ、コスタリカ(写真クリックで拡大)
上から見たところ。体を覆うように、いつもこのように盾を前のほう伸ばしている。頭がいくつも並んでいるのを拡大して正面から見ると、なぜかドキドキする。(写真クリックで拡大)
抜け殻の顔のアップの写真。(写真クリックで拡大)
カメノコハムシの一種の成虫
Adults of tortoise beetle, Calyptocephala sp.
飼育の袋のなかを毎日観察すると、いつもこの2匹はおしりをくっつけ合って休んでいる。なぜなのかわからない。交尾をしているわけではないのに・・・
体長:7 mm 撮影地:モンテベルデ、コスタリカ(写真クリックで拡大)