研究者によるアストロバイオロジー入門の4回目。“地球最強生物”クマムシの研究者、堀川大樹さんがNASAで行ったのは、「クマムシは火星と同じ環境で生きられるのか、でした。果たして結果は?(編集部)

ヨコヅナクマムシの電子顕微鏡写真(撮影:堀川大樹・行弘文子)(写真クリックで拡大)

宇宙生物学とクマムシ

 いよいよ、クマムシ・ミーツ・アストロバイオロジーです。
 私が大学院の博士課程の2年生ぐらいの頃から、この先、私とクマムシはどこに向かっていったらいいのかを考え始めました。今でもクマムシの研究はマイナーですけれど、当時は特にマイナーで、研究をどう発展させればよいかがわからなかったわけです。そこでいろいろ考えました。
 クマムシといえば極限環境に強い。極限環境といえば宇宙。クマムシは宇宙の生物なの?って言われることもある。ならば宇宙生物学、アストロバイオロジーにつなげてみよう、と思ったのです。

 アストロバイオロジーの最大のテーマであり、ゴールとなる命題は、「果たして我々は宇宙で唯一の生命であるか」ということです。ところがアストロバイオロジスト、宇宙生物学者が想定する宇宙生命体というのは、ほとんどがバクテリアのような単細胞生物なんです。多細胞生物はまったくと言っていいほどシカトされてきたわけです。

 これは納得いかないなと。クマムシは、脳もあって、消化管もあって、神経系も走っている、バクテリアとは全然違う高等な生物でありながら、極限環境に耐える能力をもっている。やはり、クマムシも宇宙生物学の想定する宇宙生命体に入れなきゃいけないと思い始めたんです。

 クマムシを宇宙生物学のモデル生物にしようと文献を探してみたところ、NASAエイムズ研究センターのリン・ロスチャイルド博士が、『ネイチャー』誌に極限生物に関するレビュー論文を書いていました。なんとその中に、クマムシの記述があったんです。
 NASAがクマムシに興味をもっているのなら、「おれ、クマムシやってるよ」とアピールしなくてはと思い、NASAの宇宙生物学研究所が主催しているアストロバイオロジー科学会議に参加しました。ワシントンD.C.まで、意気揚々と。

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