第4回 堀川大樹 宇宙生物学とクマムシと私(後編)

 こうした研究から、私は二つのことが提言できると考えています。
 一つは、火星表面のちょっとだけ地下に潜っていれば、クマムシは生きていられそうだということ。活動はできなくても、乾眠状態でやり過ごすことは可能かもしれません。

 もう一つは、実際にクマムシみたいなタイプの生命体、バクテリアでない高等な生き物も、宇宙には生息しているかもしれないということ。ですから、そういった多細胞生物のような生命も宇宙生命体の探索の対象に入れて考えなければいけないと思います。

クマムシと宇宙生物学の未来

 それでクマムシと宇宙生物学の関わりで将来できればいいなと思うことは、惑星間飛行の検証です。パンスペルミア説(生命は宇宙からやってきたとする説)などもありますが、生命体が惑星から惑星へ果たしてたどり着けるのかを検証してみたい。
 海に小瓶を浮かべるように、クマムシをいっぱい打ち上げて、ほかの惑星に生きてたどり着けるかどうか。行った先の星などを地球由来の生物で汚染してはいけないので、本当はやっちゃいけないんですけどね。

 別の観点で言うと、クマムシの強さの秘密をどんどん調べていくと、宇宙生命体の秘密がもっとわかってくるかもしれません。それをつきつめれば、我々人間もクマムシのように宇宙で生きられる耐性を身に付けられるかもしれません。
 人間がクマムシの能力を身に付けられれば、長沼さんのお話にもあったように、ゆくゆくは太陽系のほかの惑星へ有人で行けるかもしれません。さらに将来には太陽系の外の惑星、50光年、100光年先の星にいくことだってできるかもしれない。乾眠状態ではるか遠い星まで移動して、着く直前になったらお湯で戻って・・・という段階にいずれは入っていくことになると思います。1000年後か2000年後かわからないですけれど。

 ということで、クマムシとアストロバイオロジーには夢があっていいな、ということで、今日のお話を終わります。ありがとうございました。

堀川大樹

堀川大樹(ほりかわ だいき)

1978年、東京都生まれ。地球環境科学博士。2001年からクマムシの研究を始め、同生物の極限環境耐性能力を明らかにしてきた。NASAエイムズ研究センターなどを経て、2011年から2014年まで博士研究員としてパリ第5大学およびフランス国立衛生医学研究所ユニット1001に所属。『クマムシ博士の「最強生物」学講座――私が愛した生きものたち』(新潮社)の著書がある。Webナショジオ「研究室に行ってみた。」の回はこちら。Webナショジオ連載「クマムシ観察絵日記」はこちら

※ この連載は、2013年12月に相模原市立博物館で開催された講演会『宇宙にいのちを探す』の各講演を再編集したものです。

アストロバイオロジー特集が読める!
ナショナル ジオグラフィック2014年7月号

7月号特集「宇宙生物学のいま」ではSETIの創始者フランク・ドレイクから、木星の衛星エウロパの生命探査計画まで、アストロバイオロジー(宇宙生物学)の最先端をご紹介。ほかにも「巨大魚イタヤラ」「中国 巨岩の帝国」など驚きの特集をたっぷり掲載しています。こちらからどうぞ!

ナショジオストア アマゾン