第4回 堀川大樹 宇宙生物学とクマムシと私(後編)

 NASAのエイムズ研究センターで研究を始めてすぐの頃です。何とヨーロッパの宇宙機関ESAのグループが「クマムシを宇宙に飛ばした」というニュースが飛び込んできました。そうして、クマムシが宇宙レベルの超真空環境で紫外線を受けても生きていた、というような報告がありました。これは私がやりたかった研究なので落胆しましたが、これによって、やはりクマムシが宇宙空間で生きていられることが証明されました。

 私はというと、NASAで紫外線の研究をしました。紫外線は、生き物にものすごいダメージを与える環境要因の一つなので、なぜクマムシが紫外線に強いのか、ということです。
 実は、クマムシは乾眠になると、DNAに傷がつきにくくなるということを発見しました。どうやらこの性質が、紫外線に対する強さの秘密であり、生き物が宇宙へ進出し、生き残るための秘密なのかなと考えています。

左はクマムシの卵。普通は丸いが、乾燥すると写真のように真ん中がへこんで赤血球みたいな形になる。成体(右)は乾燥すると空き缶をつぶしたような感じで丸くなる。(撮影:堀川大樹・田中大介)(写真クリックで拡大)

 ほかにも、クマムシが火星環境で生きられるか、という実験をしました。
 米国のインディアナ大学に、「火星シミュレーションチャンバー」という火星環境を再現する実験装置があるんです。火星の温度サイクルやCO2濃度を模擬した装置です。そこに乾眠したクマムシを、上から5ミリくらいの厚さで土をかぶせて入れました。紫外線のある場合とない場合で、どれほど生き残るかを調べたのです。結果、紫外線があってもなくても、41日間にわたって火星っぽいところで生きたということがわかりました。