乾眠状態になると、クマムシはほぼすべての水を失います。水分の含有量は大体3%以下になりますね。そうなると、当然ながら代謝が起こらなくなります。ずっと活動状態のままならクマムシの寿命は1カ月から1年ぐらいなんですけれど、乾眠状態になると寿命がどーんと延びます。常温で9年にわたって生きのびたものが、これまでに確認されています。

 ただし、これは常温の場合です。常温だと酸化によって体がボロボロになりやすい。ですから超低温にしたり、酸素を取り除いて真空状態にしたりして保存すると、理論上は半永久的に生きのびられるだろうと思っています。

 これは実際に私が撮影したクマムシの乾眠とそこからの復活の映像です。周りに水があるときは動いていますが、水がなくなると、このように空き缶をつぶすように体がどんどん収縮して、同時に水が体の中から逃げていきます。そうして完全に乾眠に入ります。
 それで、また水が戻ってくると、給水して体が膨らみます。だんだんと足が動き始めて、最後は何ごともなかったかのように可愛く復活を遂げるわけです。

クマムシが乾燥して樽型になり、水を得てふたたび復活するまで。(動画提供:堀川大樹)

 この乾眠状態にあるとき、クマムシはものすごいストレスに耐えられることが知られています。
 高温環境だと最高で151℃に耐えたという記録がありますが、これは少し古い文献で、ちょっと確かじゃない。それでも大体100℃前後まではOK、低温はほぼ絶対零度(つまりマイナス273℃)まで大丈夫です。高圧は、7.5ギガパスカルまで耐えられます。これは水深1万メートルの75倍の圧力に相当する。

 化学物質も、アルコールや、殺虫剤に使う臭化メチルに耐えます。ただしアルコールは、濃度100%じゃないとダメです。水をかけてはいけません。乾眠から覚めて活動状態になってしまいますからね。
 放射線にも強い。これは乾眠でなく普通の活動状態でも、同じくらいか少し強く耐えられます。人の致死量が5グレイ程度なので、クマムシはその1000倍以上の耐性があることになります。

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