第3回 堀川大樹 宇宙生物学とクマムシと私(前編)

 ヨーロッパや北極圏を含め、国内外の十数種のクマムシの飼育実験をやった結果、何てことはない、札幌で見つけたヨコヅナクマムシの飼育に成功しました。
 写真の橋の上のようなところが、ヨコヅナクマムシの生息環境です。冬は雪に覆われるのですが、その下の苔にいるんですね。

ヨコヅナクマムシを採集した現場(提供:堀川大樹)(写真クリックで拡大)

 ヨコヅナクマムシの餌は、クロレラでした。単細胞の緑藻です。でも、普通のクロレラではダメで、クロレラ工業株式会社の出している「生クロレラ-V12」っていう銘柄じゃないと育たない。

 そうして飼育したヨコヅナクマムシの生育を観察した結果、卵から孵化した小さなヨコヅナクマムシが、脱皮を繰り返して大きくなり、また卵を産むことがわかった。ヨコヅナクマムシにはメスしかいないので、ある1匹から増やした系統にYOKOZUNA-1という国際的に通用する名前をつけました。

(提供:堀川大樹・阪本かも)(写真クリックで拡大)

 それでまた乾燥耐性などの研究をしたところ、このヨコヅナクマムシ、卵も成体もものすごく乾燥に強いことがわかった。他のクマムシやそれ以外の生物にも、乾燥したって死なないものはいるんですが、それらはゆっくり乾燥しないと乾眠に入らない。早く乾燥すると死んでしまうんです。ところがヨコヅナクマムシは、比較的早い脱水、早く乾いても乾眠に入ることができる。
 また、放射線とか超低温、高圧にもよく耐える。だからヨコヅナと名づけたわけなんですけれど、このヨコヅナクマムシの研究をして、私は無事、博士号をとりました。

<後編につづきます>

堀川大樹

堀川大樹(ほりかわ だいき)

1978年、東京都生まれ。地球環境科学博士。2001年からクマムシの研究を始め、同生物の極限環境耐性能力を明らかにしてきた。NASAエイムズ研究センターなどを経て、2011年から2014年まで博士研究員としてパリ第5大学およびフランス国立衛生医学研究所ユニット1001に所属。『クマムシ博士の「最強生物」学講座――私が愛した生きものたち』(新潮社)の著書がある。Webナショジオ「研究室に行ってみた。」の回はこちら。Webナショジオ連載「クマムシ観察絵日記」はこちら

※ この連載は、2013年12月に相模原市立博物館で開催された講演会『宇宙にいのちを探す』の各講演を再編集したものです。

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