第3回 堀川大樹 宇宙生物学とクマムシと私(前編)
クマムシをつかまえよう
このクマムシ、一体どこにいるのでしょう。
こんなに高性能な生き物なんですけれど、実は我々のとても身近なところにいるんです。
写真はクマムシを探しているところ。東京、吉祥寺の商店街なんですけれど、探していると、ちょっと古いアパートの壁のへりなどに、よさげな苔が見つかります。これを採集して封筒に入れます。採集していると、通りがかった人が不審そうな視線を投げかけてきたり、特に犬はよく反応しますけれど、鈍感になって耐えてください。
持ち帰った苔を、水と一緒にシャーレに入れて、一晩待ちます。そうして苔を取り除いて水の中を覗いてみると、何か動いているものがいる。肉眼ではよく見えませんので実体顕微鏡で見ると、クマムシを観察できるわけです。
さて、クマムシで私が何を研究してきたか、のお話をいたしましょう。
生き物を研究するときは、まず実験室の中で飼育してやらないといけない。ところが、クマムシは研究がものすごく遅れていて、実際に何を食べているのかさえわかっていなかった。人の害にも益にもならないので、研究する必要があまりなかったんですね。
そんななか、今世紀に入って慶応大学の鈴木忠さんが、オニクマムシという種類について、ワムシを餌にして飼育できることをみつけた。それならと、私はオニクマムシを使って乾燥や放射線に対する耐性を研究し始めたんです。
ところが、オニクマムシは世話が大変難しいことがわかった。ナイーブなんです。餌をあげなかったり、培地(培養環境)を交換するのをちょっと怠ったりすると、すぐに死んでしまう。そこで、簡単に飼育できる新しいクマムシを探すことにしました。
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