巨大な精密機械 アルマ望遠鏡はハイテクの塊!

北米チームが担当するアンテナ25基の最後の1基が、ドッキング・パッド(右下)へと運ばれる。写真=Dave Yoder
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多くの望遠鏡を組み合わせて高感度を実現

 遥か彼方の天体から届く微弱な光を観測しようとすると、より多くの光を集められるように天体望遠鏡の口径は大きくする必要がある。これは光の代わりに電波を観測する電波望遠鏡も同じこと。例えば、国立天文台の野辺山宇宙電波観測所の主反射鏡の直径は45m者大きさがあるし、プエルトリコのアレシボ天文台に至っては直径305mもある。

 ならば、より高感度の電波望遠鏡を求めるなら、さらに大きな反射鏡を建設しなければならなくなるが、大きくなればなるほど重力の影響を受けて反射鏡は変形してしまう。反射鏡が変形するようでは電波を受信機に集めることが難しくなり、口径を大きくするのも限界がある。

 そこで、2013年3月に本格稼働を開始した、アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計(ALMA=Atacama Large Millimeter/ submillimeter Array、アルマ望遠鏡)では、1つ1つの望遠鏡を小さくする代わりに、複数の望遠鏡を組み合わせることで、巨大な望遠鏡以上の高感度を実現している。

 アルマ望遠鏡は、大きなものでも12mしかないが、12mの望遠鏡54台、7mの望遠鏡12台を、山手線内と同程度の広さの土地に建設された192の台座に配置。広大な土地のすべてを望遠鏡で敷き詰められるわけではないが、観測対象に合わせて最適な位置に配置することにより、世界最高感度で宇宙から届く微弱な電波を観測できるようになっている。

12mの反射鏡の凹凸は0.02mm以下

 電波望遠鏡では、主反射鏡が受けた電波はいったん副反射鏡に集められた後、主反射鏡の中央にある受信機に導かれる。もし主反射鏡に凹凸があると電波は散乱してしまい、副反射鏡に電波を集めることは難しくなってしまう。特にアルマが観測対象にしているミリ波、サブミリ波という波長の短い電波はわずかな凹凸でも電波を集める妨げになるため、アルマの主反射鏡の凹凸は20μm(0.02mm)以下にする必要があった。

 20μmというのは一般的なキッチンラップの厚さとほぼ同じ。直径12mに許される凹凸がキッチンラップの厚さ以下だとイメージすれば、アルマの主反射鏡に求められる平滑さがいかに高いレベルにあるかがわかるだろう。そのため凹凸を5マイクロメートル以下に抑えた約1平方メートルの鏡面パネルを作製。これを205枚敷き詰めることで、20マイクロメートル以下という要求に適う主反射鏡が作られた。

 これほどの精密さが求められるのだから、鏡面パネルと取り付ける骨組みにも精密さが求められるが、アルマが建設されたのは標高5000mのアタカマ砂漠。電波の受信に悪影響を与える湿気を避けるため、乾燥した広大な土地を探した結果、この地が選ばれたのだが、高地ゆえに昼夜の温度差が激しく、その差は40℃にも達する。もしアルマの骨組みが熱膨張しやすい金属で作られていたら、温度差による変形は避けられない。そこで、アルマの骨組みには熱膨張しにくい炭素繊維が採用された。

 光学望遠鏡のようにドーム内に建設することはできないため、高地特有の強風の対策が求められる。アルマ望遠鏡には数多くの姿勢センサーが搭載されており、風で傾いてもすぐに姿勢を立て直せるようになっている。

 こうしてハイテクの粋を集めて建設されたアルマ。従来の電波望遠鏡では観測できなかった、宇宙空間に漂う塵が発するミリ波、サブミリ波を観測できることから、誕生前後の星の様子を明らかにするとともに、アミノ酸などの生命関連物質の探査により宇宙における生命の起源に迫ることが期待されている。

(文・斉藤勝司)