第106回 タイ菓子が呼び込む金運、人運、仕事運!

 フォイトーンだけでなく、タイのお菓子には香りを付けたものが多いという。「パンダン(香りや色付けに使う植物の葉)を使ったり、香料が入ったロウソクでいぶしたりしてお菓子に香りを付けるんです。ジャスミンやイランイランなどお花の香りが多いですね」と石川さん。特に、タイの家の庭でよく見かける花、ジャスミンが香るお菓子が多いそう。度々タイを訪れ同国の食事情にも通じた石川さんだが、このお菓子にまとわりついたジャスミンの香りは苦手らしい。

 一方、卵はお菓子作りではおなじみの食材だが、実は、タイではアユタヤ王朝の時代にようやく、海外の影響から使われるようになったものだという。そして、お菓子には、鶏卵よりも発色がいいアヒルの卵を使うことが多いという。「卵は生臭いでしょ。だから、ジャスミンなどの香りを付けるんです」とダー先生。「タイの人は日本人よりも卵の生臭さに敏感なようですね」と石川さんが続ける。なるほど、これも香り付けの理由のひとつなんですね。

一つひとつに意味があるタイの縁起菓子

 フォイトーンのような、黄金を思わせるきれいな黄色のお菓子を作るのに適した卵は、縁起菓子にうってつけの材料と考えられたようで、9つのうち7つが卵を用いた黄色いお菓子だ。そして、それぞれが昇進、金運など、かなり具体的な意味を持つ。例えば、花の形をしたお菓子「トーンイップ」のイップには、取る、という意味があり、金銀財産が取れますように(入ってきますように)、という願いが込められ、緑豆餡のお菓子メットカヌン(メットは種、カヌンはジャックフルーツ)は、援助するという意味の「ヌン」という言葉にカヌンが似ていることから、協力する人がたくさんいますように、といった意味が込められている。

 一方、仕事運を上げてくれるのが、卵を使わないお菓子「カノムチャン」(チャンは層という意味)。タピオカ粉などを使った透明感のある薄い生地を何層にも重ねたもので、層状であることが一段一段上がっていく様子を彷彿とさせることから、どんどん高い地位についてください、昇進しますようにという意味を持つ。現地では好きな人が多く、タイ菓子の専門店にしか売っていない縁起菓子もある中、市場などでもよく見かけるお菓子だという。

タイ菓子専門店「バーンカノムタイ」のショーケースには、様々な縁起菓子が並ぶ。右上に見える黄色いお菓子がそれ。手前から、トーンイップ、フォイトーン、メットカヌン