第1回 すべてが完璧だったその一瞬

「すべてが完璧」と言わしめた「アフガンの少女」。1985年6月号の表紙を飾った

 すべてが完璧でした。
 光の加減、背景と彼女の衣服、そして彼女の瞳。

 テントの外は強い日差しにさらされていましたが、中の光はソフトでした。背景のテントの生地と彼女の着ている衣装の色とのコントラストも良かった。彼女の表情も完璧でした。

 撮影に必要なさまざまな構成要素が、偶然にもうまい具合に組み合わさって、あの写真を撮ることができたのです。

――彼女には「こうしてほしい」というような注文を出したのですか。

 何もしていません。
 ただ許諾を得て、レンズのほうを見てもらっただけです。

 ふつう、人物を撮るときは、その場の雰囲気を和やかにすることが大切で、私もそれを心がけています。しかし、ここでは何も特別なことはしませんでした。彼女との間には会話らしき会話もありません。アフガニスタンの女性は、これも宗教上の理由で、男性に話しかけることを禁じられているからです。お互い、言葉も通じませんしね。

 しかも、彼女にとっては写真を撮られるのは、生涯で初めてのことだったんですよ。「こうしてほしい」などとは言えません。彼女はまったくの自然体でした。

――撮影で、そのように完璧な条件に恵まれることは、よくあるのですか。