第85話 「もしも」の備えは、お腹で温める!

 犬橇で遠出することになった。

 雪が降って消えかかっているトラップライン(罠師の道)を、再び犬橇で走って踏み固めるためだ。

 この道は、この周辺の森に住む人たちの大切な生命線の1つでもあるので、常に開いておかなければならないのである。

 今回は距離が長いので、帰りが日没後になることが分かっていた。

 だから、もしものときに備えて、橇にはノコギリや斧、かんじきや簡易調理用ストーブなどサバイバル道具と共に、私たちと犬たちの食料も積み込むことになる。

 トーニャは、その荷物の重さを考えると、力の強い体の大きな犬たちを主に連れていくと言った。

 体が大きくて、力が強いと言えば、やはり、あのソルティーのことが頭に浮ぶ。

 けれど遠出となると、なおさら連れて行けないことも分かっていた。

 ドッグヤードに出ると、一番に聞こえてくるのは、ソルティーの声である。

 大きな体で思い切り吠えまくるものだから、太い声が遠くまで響き渡っていた。

「今回も、またお留守番だよ……」