リトアニアの人口は約300万人。田舎に住むのはそのうち100万人だというが、彼らのほとんどが農園を持ち、鶏や豚を飼って生活しているとダリアさんは言う。「いまでも国の食料は自給自足で賄えます。リトアニアは農民の国なんです」。前にガリナさんが「リトアニア人は温室で収穫時期を調整した作物を好まないし、料理の味付けも薄め。自然の素材、味を大事にしている」と話していたのを思い出した。ツェペリナイの素朴な味も、夏と冬のソウルフードがあることも、土とともに生きる民だからこそなのだろう。

 だがしかし、だ。ツェペリナイがなぜ冬のソウルフードなのか。その疑問をぶつけると、ダリアさんはこう答えた。

 「ジャガイモは“主食”なんですよ」

 16世紀に南米からヨーロッパへと伝わったジャガイモは、栄養価が高く、寒冷で痩せた土地でも育つことから、17世紀にヨーロッパ各地で起こった飢饉の際に広く食べられるようになった。保存がきくため冬の大事な栄養源となり、東欧や北欧では主要作物となっている。リトアニアでは黒パンが主食だが、毎日のようにジャガイモが食卓に上がり、ヴェダレイというジャガイモの腸詰めなど珍しい料理もある。その中でとくにツェペリナイが愛される理由は、会話に加わったガリナさんが教えてくれた。

 「リトアニアの冬はマイナス20度にもなるほど寒く、エネルギーをすごく必要とします。ジャガイモが凝縮されたツェペリナイはずっしりとして腹持ちが良く、パワーも出る。寒い冬を乗り越えるために欠かせない料理なのです」

ダリアさんはリトアニアの食品の輸出拡大を目指し、農林水産省や厚生労働省と交渉するために来日した。ケフィア(発酵乳)やカード(チーズになる前の状態のもの)など、日本では珍しい乳製品を広めたいと言う

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