「それは非常にいい質問で、やっぱり地球、いえ、銀河は物質が集まってできたところですよね。今、僕たちのまわりに一番多いのは、普通の元素。だから、普通の元素の密度が、暗黒エネルギーの密度よりも圧倒的に高いんです。そのおかげで林檎は落ちてきます。でも、宇宙空間に飛び出して、平均的なところにいくと物質はすごく薄くなると。でも、暗黒エネルギーの密度はどこも一定なので、その影響が強くなるんです」

 ここで思い出すのは、宇宙において、普通の物質の密度はたかだか5%ぐらいであり、暗黒物質は23%で、暗黒エネルギーが72%、という観測事実だ。たまたま我々のまわりは局所的に、普通の物質が多く、暗黒エネルギーの影響が相対的に少なくなる、ということ。なんと、特別な世界に、我々は住んでいることか! というのが今の宇宙論から、ぼくが抱く感慨だ。

 また、ここで注目すべきは、普通の物質が宇宙のあちこちに偏って存在しているのに対して、暗黒エネルギーはどこでも同じ密度であるとされていることだ。小松さんは、その点に違和感を抱いているという。

「今の定説では暗黒エネルギーの密度、単位体積あたりの量っていうのは変わんないと。観測結果をうまく説明しますし、アインシュタインが重力場の方程式に導入した宇宙定数という概念があって、それと似ています。そうするのが一番単純なんだから、いいじゃないかっていう考えがありつつ、定数って言われてしまうと、自由度がなさすぎて、性質を追求しようがないんですよ」

 定数なら、いつもそこにあるものとして、数式の中にある固定された数をぶち込んでおけばいい。宇宙定数は宇宙が膨張していると観測される前に、アインシュタインが宇宙を「定常宇宙」にしておくために「万有引力」ならぬ「万有斥力」を表現するものとして重力場方程式に導入したものと理解している。のちに、宇宙の膨張が発見された時、彼は「我が人生最大のあやまち」として、宇宙定数を撤回したとか。しかし、それが回り回って、観測事実から「宇宙定数のようなもの」を導入しなければならなくなっている、というわけだ。

 しかし、訳の分からない定数があるのは気持ち悪い。そこで、小松さんが今後の課題として胸に抱いているのが、暗黒エネルギーが実は時間変化するのではないか、という問いだ。

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