答えは、「Bモード偏光」だ。

「インフレーションは、カーンと宇宙を叩いて音波をつくるってお話ししました。でも、それだけじゃなくて、実はそのカーンの瞬間に重力波も生まれるんですね。重力波は、空間の歪みです。たとえば、僕自身が持つ重力のため、僕のまわりの空間は歪んでいます。ここで僕が手を振れば、その空間の歪みが変化して、歪みがまわりに伝わっていきます。これが重力波です。僕が作り得る重力波は小さすぎて問題になりませんが、インフレーション中に作られた重力波なら見える可能性があります。その時の重力波が見つかれば、もうインフレーションの決定的な証拠です。なぜって、その時に出た重力波、やっぱり波ですので、波長があるんですが、それが引き延ばされてなんと10億光年! 波長が10億光年もある重力波が飛び交ってるっていうんですよ。そんなこと普通あり得ない(笑)。これはもう絶対に天体ではつくれるわけがないので、起源としてインフレーションしかないんです。これが発見できたら、もう誰も何も文句言えないです。宇宙論業界のコンセンサスになってますので、誰一人文句言う者はいないと思いますね」

 そして、波長10億光年の重力波を検出するために、必要なのがBモード偏光の観測、なのだそうだ。

 偏光というのは、立体映画を見るときにかける眼鏡やら、釣り人が好んで使う偏光サングラスなどの偏光と同じだ。写真で水面のギラつきを抑える時にも偏光フィルターを使う。

 ただし、重力波が関与して出るBモード偏光は我々が普段体験している偏光とは違い(このあたりの説明は長くなりすぎるし、元々心許ないので割愛)、波長10億光年に相当するBモード偏光はインフレーションの結果と解釈する以外にない、ということなのだった。

「宇宙背景放射のゆらぎは、のっぺりした成分の10万分1スケールのさざ波と言いましたけれど、Bモード偏光はさらに2桁以上も弱いんです。ですので、観測がとても難しい。僕は、今、日本の高エネルギー研究所の羽澄昌史先生のグループと共同研究しています。羽澄先生は今、チリで頑張って、POLARBEARっていう専用望遠鏡を、高エネルギー研とカリフォルニア大学バークレー校と共同で作って、Bモード偏光を観測しようとしています。それが5σで検出できて、インフレーションを発見した、とはじめていえると思います」

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