「僕たちのWMAPでは、99%までの精度で観測できたと言いましたよね。実はこれは、理論が予測する宇宙背景放射のゆらぎが、大きな角度で見た場合(COBE衛星は7度)と、小さな角度(WMAP衛星は0.2度)で見た場合、ごくごくわずかに違うことが検出されたということでした。それが2013年のプランク衛星の最初のデータと解析発表で、WMAPよりもさらに半分くらいの角度で観測して、そこでもさらにゆらぎの違いを発見したので、この時点で5σをクリアしました。インフレーションについて強い証拠が出てきたと言っていいんですよ」

 小松さんは、ここで一転してやや不満そうな顔を見せた。

「宇宙論業界では、まさにここが重要なところだったんですが、プリスリリースを出したESA(ヨーロッパ宇宙機関)は、やっぱり宇宙の年齢が分かったとかやるんですよね。137億年とWMAPが言っていたのが、138億年だとか。なんかポイントがずれているんです」と。

 たしかに、突拍子もないインフレーション理論が正しいと確認できれば、宇宙論研究者が30年以上追いかけてきた大きな懸案が片づいたことになって、まさにビッグイベントだ。

 ただし、プランク衛星の観測によっても、インフレーションの「発見」にはまだ足りないのだという。小松さんの研究のロードマップには、インフレーションが実際にあった事実として認めうる観測を行っていく計画がまずある。

 そのためには、何を観測するのだろう。

天井から吊り下げられていたプランク衛星のオブジェ。小松さんの研究所と同じく、ノーベル物理学賞を受賞した“量子論の父”、マックス・プランクにちなんで名づけられた。(写真クリックで拡大)

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