というのも、これはインフレーションが終わって宇宙が加熱され、宇宙がまだ光と物質が相互作用する流体だった時代が終わった瞬間(宇宙の晴れ上がり)に放たれた、太古の情報が含まれるぎりぎりの光なのだから。ぼくたちもよくあるではないか。いつでも撮れると思って、全員集合の記念写真を撮らずにいたら、いよいよお別れの時間がやってきて、あ、まずい、急いで撮っとけ、ハイ、チーズ、みたいなパターン。その後、最初の星ができ、局所的に電子が再電離すると、再び散乱を受けた光は最初の頃の情報を一部失ってしまうわけだが、それでも、貴重すぎる宇宙の始まりのポートレイトが、WMAPやプランク衛星によってもたらされた。

 今後、インフレーション理論をどう追い込んでいくか、小松さんの「これから」を絡めて質問した。

 小松さんは、やはりインフレーション宇宙の理論の、信じられなさ、についてから説き起こした。

「どう考えても、インフレーション宇宙の理論ってめちゃくちゃなことを言ってると思うんです。それこそ10のマイナス36乗秒という、ものすごい短い間に全部起きて、その後、宇宙の晴れ上がりは38万年ですから、大分開きがあります。本当もう何かめちゃくちゃですよね。まず宇宙がどう始まったか誰もわかんないし、インフレーションがあったかどうかもわかんない。まあ、どうもありそうだという気配は大分感じてきている。でも、そこからどうやって宇宙が加熱され、ビッグバン宇宙が始まったのか。つまり、どうやってこのエネルギー源が熱に変わったのかっていうのは誰も知らない」

 小松さんは本当に楽しくてたまらないと雰囲気でいうのだ。WMAP衛星の成果で「宇宙論を決めた」後でも、それだけの疑問が残っている。

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