「──物理的に正確なバージョンは、まず、金属の花瓶と陶器の花瓶を用意します。で、叩くと何か音がしますねと。叩くことによって、花瓶全体に疎密波が広がっていくわけですね。で、こういう衝撃を与えたらこういう音を出すっていうことから、この花瓶が何でできているかわかりますね、と」

「──もう1つは、みんな好きだからよく使っている例えです。味噌汁に例えばカボチャとかを落とすと、波が伝わると。この波は疎密波じゃないんでその点は違うんですが、式にすれば一緒なのでまあよしとして。で、味噌がどれくらい入っているか、ダシがどれくらい入っているか、あるいは味噌汁ではなくてすまし汁だったとか、そういうことで波形が変わります。逆に言えば、その波形を見ると、味噌の量だとか、実はすまし汁だとかが分かるわけです。実際には、カボチャをバンバン落としまくって、後から後から波ができていくのが、その頃の宇宙の描像です。で、今の宇宙では、その時に最初に落とされた『カボチャの波』はものすごく広がって大きな角度で見えていて、後から落とした『カボチャの波』は小さい角度で見えるんです」

 こういった音波の痕跡が、宇宙の晴れ上がりの瞬間に解き放たれた光、つまり宇宙背景放射のゆらぎとして残っていて、それを見るためには、COBE衛星の7度という角度分解能では大きすぎた。1度以下の角度を見なければならなかったそうだ。

「初期宇宙の流体で音波の縮んだり伸びたりする特徴的な長さが1度ぐらいなんですよ。COBE衛星では角度分解能が足りずならされてしまってわからないんですが、WMAPで見ると0.2度ぐらいまで見えますので、膨張したり、収縮したりしているところが分かります。その音波をきちんと描ききったのがWMAPなんです」

 そのようにして、小松さんたちは宇宙初期の「音波」を見ることができた。では、その音波からどのようにして我々の宇宙についての情報を取り出すのか。さらには、その情報から我々の宇宙のいかなる部分が分かってくるのか。

インフレーションから宇宙が晴れ上がりまでに鳴り響いていた「音(疎密波)」が、宇宙背景放射のゆらぎとして残されることを示すイメージ映像。媒体の状態によっても、「カボチャ」の落ちるタイミングによっても、波の起こり方は異なる。(出典:NASA / WMAP Science Team)

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