第3回 ビッグバンは宇宙の始まりではない

 WMAPの観測はインフレーション理論を確からしいものにした。しかし、「インフレーションを発見した」と言い切れるほど十分な証拠ではない。また特別研究員に応募したときのもうひとつのテーマである重力理論の検証の方も志半ばである。

 しかし、WMAPがなしとげたことは、実にすごいことでもあって、小松さんの言い方では「宇宙論を決めた」だ。

 もっと、詳しく述べるなら、宇宙背景放射に含まれる「シワ」、つまり温度ゆらぎの精密観測で得た情報から、この宇宙を素描するために必要な6つのパラメータを決めようとした。

「6つのパラメータというのは、『温度ゆらぎの大きさ』、『バリオン(我々が知っている陽子や中性子など”重たい”粒子)の密度)』、それから『暗黒物質の密度』。さらに、宇宙の膨張にかかわる『ハッブル定数』、『原始ゆらぎのスケール不変性』、そして宇宙の『光学的厚さ』です。それらが分かれば、宇宙論が分かってくるんですよ」

 バリオンは通常の物質の構成要素、陽子や中性子などだからともかく、暗黒物質やら、ハッブル定数やら、スケール不変性やら、光学的厚さなど、説明を要する言葉が出てきた。でもここでは、こういったパラメータを解き明かすことで見えてきた宇宙の歴史を一気に概観してもらったほうがいいだろう。WMAP研究グループがみずから描いた図があるので、それを見ながら宇宙の歴史を追いかけてみよう。