第3回 ビッグバンは宇宙の始まりではない

「MAPのことを知って、これは願ったりかなったりということで、ぜひ自分の手でインフレーション理論を検証したいと思いました。でも、アメリカに行こうにも、学生なんでお金がないわけですよ。そこで日本学術振興会の特別研究員制度っていうのに応募して、『宇宙マイクロ波背景放射を用いたインフレーション及び重力理論の検証』を、MAPに参加して全部やってやる! みたいなことを書いたら、無事通って大学院生のままプリンストン大学に行きました。それでMAPに入れてくださいと頼み込みながら、2年間経過して(笑)。やっと認めてもらえて、そこからスタートですね。打ち上げが成功した2001年から2006年ぐらいまでは、僕、ほぼ寝てないんじゃないですかね。本当、悲惨でしたね。まあ楽しかった。やりがいはあったんでよかったんですけど。今やれって言われても無理でしょうね」

 と笑いながら述べる小松さんは、観測データの解析に大きな貢献をして信頼を得た。チームが疲れ切っている時にでも、手のかかる厄介な解析に自ら「やります」と手を挙げ成し遂げた。そういった努力で、道は開けた。プリンストン大学で学ぶ大学院生から、博士研究員、更にはテキサス大学の助(アシスタント)教授、准(アソシエイト)教授、教授とキャリアアップしつつ、2年に1度行われる観測データと解析の結果をまとめた論文の筆頭著者を2009年、11年と2度にわたって任された。前に「年間論文引用数ナンバー1」と述べたのはこれらだ。

 では、小松さんは、最初に広げた大風呂敷「宇宙マイクロ波背景放射を用いたインフレーション及び重力理論の検証」をすべて実現できたのだろうか。

 答えはどうやら、ノーらしい。