第2回 宇宙にシワがあるのはなぜなのか

宇宙背景放射の天球儀。(写真クリックで拡大)

 小松さんが、執務室でぼくに見せてくれた宇宙背景放射の天球儀はまさに、そのシワを表現したものだった。もっとも、データはCOBE衛星ではなく、「後継機」といえるWMAP衛星によるものだ。そして、このWMAP衛星の観測こそ、小松さんが研究者として関わった最初の大きなプロジェクトなのである。

 WMAP衛星は、COBE衛星の後を引き継いで、さらに詳細な証拠を積み上げ、小松さんも、チームの一員として、数々の貢献をすることになるのだが、それは後述。ここでは、まず、当然、湧いてくるであろう素朴な疑問について。

 そのゆらぎは何に由来するのだろうか。宇宙が「のっぺりしつつ、シワだらけ」と相反する性質を持つそもそもの理由は何なのか。インフレーション理論でそれがうまく説明できるというのだが、そのあたりもう少し詳しく知りたい。

「インフレーション理論というのは、宇宙の開闢(かいびゃく)から、10のマイナス36乗秒という瞬きもできないような刹那に、何10桁も膨張したというものです。原子1個分の領域が太陽系くらいの領域になるまで引き延ばされたと言われています。宇宙が大きく見ると均質だというのは、もともと非常に小さかった均質な領域がこの膨張によって大きく引き延ばされたからです」

 インフレーションにより、その前の均質な状態がそのまま宇宙規模に拡大されたということ。それにしても、原子1個分の領域が一気に太陽系くらいになってしまう急膨張とは! いかに理論と観測に整合性があるとはいえ、凄まじい。ごく普通に考えて、その時に均一ではない部分が多少あったとしても、それだけ引き延ばされれば、検出不可能なほどにならされてしまうのではないだろうか。宇宙背景放射がのっぺりしているはずである。

 にもかかわらず、10万分の1のスケールで、ちいさなゆらぎが観測される。これをインフレーション理論はどう説明するのだろうか。