「宇宙誕生の重力波」はまだ証明されていなかった――小松英一郎氏緊急寄稿

我々の運命は宇宙が始まったときに決まっていた

 それでは、この揺らぎはそもそもどこから来たのであろうか? この万物の根源への問いの答えが、今まさに得られようとしている。

 この問いに答えるのが、佐藤勝彦東京大学名誉教授などが1981年に提唱した「インフレーション宇宙論」である。インフレーション宇宙論は、とんでもない予言をする。我々の宇宙は、宇宙開闢後、1兆分の1の1兆分の1のさらに1兆分の1秒という刹那に、1兆倍の1兆倍のさらに100倍以上という途方もない膨張をしたというのである。これは、原子核ほどの大きさが瞬く間に太陽系ほどの大きさになってしまう凄まじさである。常識的に考えて、そんな事があるわけがないと思うのが正常であろう。しかし、そのような非常識な事が起こり得るから、宇宙の探究はやめられない。

 米国の天文学者であり売れっ子作家でもあったカール・セーガンは、著書『コスモス』の中でこう語る。「途方もない主張には、途方もない証拠が必要である。」インフレーションのような途方もない主張を証明するのに必要な、途方もない証拠とは何であろうか? 鍵となるのが「揺らぎの起源」である。

 原子核ほどの大きさの極微の世界を記述するには、量子力学が必要となる。量子力学によれば、エネルギーの大きさは常に定まっておらず、揺らいでいる。しかし、このような揺らぎが問題となるのは極微の世界であるから、日常生活で揺らぎを問題にする事はない(が、携帯電話などに使用される半導体は量子力学の原理を利用したものであり、今は量子力学なしに日常生活を送るのが難しいのも事実である)。しかし、インフレーションが状況を一変させる。極微の世界で誕生した量子的なエネルギーの揺らぎは、瞬く間に天文学的な大きさに引き伸ばされてしまうのである! すなわち、インフレーションは量子的な世界と天文学的な世界を結びつける役割を果たすのである。

 これらの考察から導かれる驚くべき結論は、銀河も、星も、惑星も、我々も、みなインフレーション中に生成された量子揺らぎから生まれた、という事である。この広い宇宙のどこに、いつ我々が生まれるのかは、宇宙開闢後間もなく既に決まっていたのである。このような途方もない説を、果たして受け入れられるであろうか?

 実験を行い、それが観測事実であるならば、受け入れざるを得ないのである。しかし、その観測事実には、決定的かつ圧倒的な説得力が求められる。

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