第6回 10歳で誘拐され、地下室に8年間監禁されたウィーンの少女

 婦人が警察に電話をかけると、数分後には警官が到着し、ナターシャを保護した。ナターシャは体の傷跡とDNAテストによって正式に身元が確認された。のちに警察は、彼女が監禁されていた部屋で、1998年発行のパスポートを発見した。
 ナターシャの健康状態は総じて良好だった。ただし、体重はたったの48キロで、身長も誘拐されたときから15センチしか伸びていなかった。

 警察に追われていることを知ったプリクロピルは、ウィーン北駅の近くで列車に飛び込んだ。彼は何年も前に、当局が自分を「生きて逮捕することはない」とナターシャに言っていた。

新たな生活

 苦しい試練のあいだもずっと、何かがナターシャの生きる力になっていた。警察は彼女の知性と語彙力に舌を巻いた。ナターシャは虐待にもかかわらず、誘拐犯に同情し、「かわいそうな人」と呼び、プリクロピルが死んだと聞かされると涙を流した。

 ナターシャは新しい生活に馴染んでいるようだ。2008年には、自分がたいへんな苦難を経験した家を購入し、時おり訪れた。2008年6月1日には、オーストリアのテレビで、自身がホストを務めるトーク番組が始まった。


 このエピソードは、書籍『本当にあった 奇跡のサバイバル60』に掲載された実話から抜粋したものです。このエピソードの全文とほかの59本の驚愕の実話はこちらでご覧ください。

本当にあった 奇跡のサバイバル60

 岩に挟まれた自分の腕を切り落として脱出した登山家、8年間地下室に監禁された少女、ヒッチハイカーを乗せたら身ぐるみをはがされて不毛の荒野に放置された男、難破した船上でくじ引きで負けた仲間を食べて生き残る男たち……。
 絶体絶命の危機から生還した驚異のエピソードを60本収録しました! 『大脱走』『127時間』『キャプテン・フィリップス』など映画や小説になった逸話も多数あります。写真や図解、地図もたっぷり掲載、当時の報道や脱出ルートがひと目でわかり、現場に居合わせたかのような臨場感を味わえます。

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