第6回 10歳で誘拐され、地下室に8年間監禁されたウィーンの少女
1998年3月1日の朝、オーストリアのウィーンに暮らす少女、ナターシャ・カンプシュは、鞄に勉強道具を入れ、いつものように学校に向かった。ところがそれ以来、彼女は8年にわたって家族の前から姿を消してしまう。ナターシャは10歳だった。
警察の捜索
ナターシャが白いマイクロバスに引きずり込まれるのを見たと、12歳の目撃者が証言した。警察は大がかりな捜索を開始し、776台のマイクロバスを調べた。その中にはボルフガング・プリクロピルの車もあった。彼はナターシャが暮らす家から30分ほどのところに住む元エンジニアだ。
プリクロピルにはアリバイがなかった。マイクロバスを所有していることを認めたが、仕事でいろいろなガラクタが出るので、それを自宅に持って帰るのに必要なのだと主張した。警察はその説明を真に受けた。
ナターシャは誘拐された時にパスポートを持っていたので、警察は国外にも捜索の輪を広げた。しかし、それ以上手がかりはつかめず、結局、彼女の行方はわからなかった。
地下室に8年間
プリクロピルは、ガレージ下の窓のない防音の地下室にナターシャを閉じ込めた。広さはわずか5平方メートルで、扉は鋼鉄で補強されたコンクリート製だった。この出入り口は金庫で塞がれていた。
「お前はもうナターシャじゃない。俺のものだ」