「僕がよく一般講演とかで言うのは、『遠くを見るほど昔が見える』ってことですね。光が進むのに時間がかかるから、遠くを見れば見るほど、昔の姿が見えるんだよと。だから、ものすごく遠くを観測して写真を撮ったら、138億年前の宇宙の始まりまで見えちゃった。ものすごい遠いところから飛んできた光が写っていました、と。それが、宇宙のはじまりの姿、CMB、宇宙マイクロ波背景放射ということですね」

 ここでいうマイクロ波はかなり広い概念で、前回、紹介した、アルマ(アタカマミリ波サブミリ波干渉計)の観測対象であるミリ波から、もう少し波長が長い(つまり周波数が低い。さらにいえばエネルギーが低い)センチ波くらいまでをさすことが多いようだ。WMAPの波長は3.2ミリから1.4センチまででで、まさにその範囲だ。

 小松さんは、ぼくにバスケットボール大の複雑な模様が描かれた球体を差し出した。

「これは僕もチームの一員だったWMAP(ダブリュ・マップ)という観測衛星で宇宙の全方向を撮影したものなんです。アメリカが打ち上げた宇宙背景放射専用のもので、地球の磁気や太陽の放射の影響が少ない月の裏側(正確には裏側というにはさらに遠い第2ラグランジュ点)まで行って、全天を観測しました。2001年に打ち上げられて2010年まで観測を続けたんですが、2003年に最初の年の観測データと分析をリリースした時に、これも作ったんですね。WMAPのWは、宇宙背景放射を世界で2番目に測定した人で、その発表直前に亡くなったウィルキンソン博士の名前を取ったものです」

 複雑な模様の球体は、観測しうる最古の宇宙全天を天球儀としてマッピングしたものなのだ。観測した位置から見えたものだから、我々は球体の中心にいて、そこに描かれた模様、宇宙背景放射に取り囲まれていることになる。

「赤道のところが赤くなっていますが、これは銀河面からの放射なので、この部分は宇宙の古い姿ではないんですけどね」と注釈があった。

最古の宇宙全天の天球儀を見せてくれた。赤い部分は我々の銀河面。(写真クリックで拡大)

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