世界で年間70億トン以上も消費されている石炭。その需要は今も増え続け、環境への影響も深刻化してきた。石炭を「クリーン」に使う方法はあるか。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

石炭はどこまで「クリーン」になれる?

世界で年間70億トン以上も消費されている石炭。その需要は今も増え続け、環境への影響も深刻化してきた。石炭を「クリーン」に使う方法はあるか。

文=ミシェル・ナイハウス/写真=ロブ・ケンドリック

 環境にやさしい「クリーンな石炭」などあり得ないと、環境保護派は言う。

 米国東部の炭鉱地帯が、その何よりの証拠だろう。アパラチア山脈の山々は石炭採掘のために山頂ごと無残に削り取られ、渓流の水は酸性の物質による水質汚染でオレンジ色に染まっている。

 中国に目を転じれば、最近の北京市内は空港ロビーの喫煙所以上に汚れた空気に包まれる日が多い。中国の大気汚染の主要な原因は石炭の燃焼だ。呼吸器疾患など、大気汚染が原因とみられる死者は年間100万人を超える。

 石炭は莫大な社会的代償を伴う燃料であり、最も環境負荷が大きく、最も多くの死者を出しているエネルギー源だ。しかし、こうした負の側面を考慮に入れなければ、燃料としては最も安い。実際、私たちは石炭に依存した暮らしを送っている。

 そこで問われるのは、石炭が環境に及ぼす影響をどこまで小さくできるかだ。石炭をまったくの「クリーンエネルギー」に変えるのは無理だとしても、少なくとも許容できるレベルまで、つまり気候が地球規模で急激に変動するのを防げる程度まで、環境負荷を抑えることは可能だろうか。

当面はやめられない石炭火力発電

 米国では、発電所が排出する二酸化硫黄や窒素酸化物といった汚染物質については法規制が導入され、排出量を大幅に減らす効果を上げている。だが、地球温暖化の主要な原因である二酸化炭素(CO2)の問題は、これらの汚染物質とはまったくスケールが違う。

 2012年に化石燃料の燃焼により世界中で排出されたCO2は、史上初めて345億トンに達した。そのなかで最も多いのが、石炭の燃焼による排出だ。近年、米国では天然ガス価格の下落で石炭の需要が減っているが、ほかの国々、特に中国では需要が急増している。

 今後20年のうちに新たに電気を使う人は何億人も増える。今の傾向が続けば、その大半は石炭火力発電による電力を使うことになるだろう。代替エネルギーの利用や省エネルギーをいくら強力に推進しても、少なくとも当面は石炭火力発電をやめるわけにはいかないようだ。

 北極圏の氷の融解や海面上昇、そして、熱波などの異常気象。私たちの未来に影を落とすこうした現象が今後どの程度進むかは、世界の国々が石炭をどう利用するか、とりわけ米国と中国がどう利用するかに大きく左右される。これまで通り石炭を燃やしてCO2を排出し続けるか、それとも、化石燃料から出る硫黄や窒素を除去するのと同じように、炭素を回収し、地下に貯留する技術を確立するのか。

 米国と中国で、その取り組みを追った。

※ナショナル ジオグラフィック2014年4月号から一部抜粋したものです。

編集者から

 この特集で取り上げた二酸化炭素の回収・貯留(CCS)。日本ではまだ発電所で実施した事例はありませんが、北海道苫小牧市では製油所で発生する二酸化炭素を地下に貯留する実証プロジェクトが始まっています。ただし、まだ調査や設備建設の段階にあり、実際に貯留する試験は2016年度から始まる予定とのこと。地震国である日本でも有効なのか、賛否両論のある手法だけに注意深く見守る必要がありそうです。(編集T.F)

この号の目次へ

翻訳講座

ナショジオクイズ

キリン科の動物は次のうちどれ?

  • シマウマ
  • オカピ
  • トムソンガゼル

答えを見る

ナショジオとつながる

会員向け記事をお読みいただけます。

ナショナル ジオグラフィック バックナンバー

ナショナルジオグラフィック日本版サイト

広告をスキップ