花粉の運び屋を誘惑する花のおもしろ戦略集

コウモリが蜜を吸おうと花に顔を入れると、おしべの葯(やく)が額に当たって花粉がつく。花を縦に切り、撮影用に捕獲した野生のコウモリを使って、その瞬間を記録した。写真= Merlin D. Tuttle
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 花粉の運び屋である生き物を誘い込むために、植物たちはあの手この手で工夫を凝らしている。花が繰り広げるユニークな誘致戦略をいくつか紹介しよう。

ナイトマーケットを開く植物

 夏の夜、レースのような純白の花びらを広げるカラスウリや、日没とともに黄色い花を咲かせるオオマツヨイグサ。月明かりに浮かび上がるこれらの花は、いわば天然のネオンサイン。夜に活動するガの仲間が次々に訪れる。夜に花を咲かせる植物たちは、競争相手が多い日中を避け、夜行性の生き物にターゲットを絞ることで集客率を上げ、効率よく花粉を運んでもらう繁殖作戦を行っているのだ。

“一夜花”として有名なサボテン科のゲッカビジン(月下美人)もこのタイプ。ゲッカビジンの大輪の花が分泌する多量の蜜と濃厚な芳香はコウモリを誘う。

サンルームで虫をもてなす花

 雪解けのころに咲くフクジュソウの花には、蜜がない。代わりに陽だまりを作って虫を誘う。フクジュソウは天気のよい朝にパラボラアンテナに似た形の花を広げ、太陽の動きを追う。つやつやとした黄色い花びらは日光を反射させ、雄しべと雌しべがある花の中心部に熱を集める。

 気温が低く、活発に動けない冬越し中のハナアブ類にとって、外気温より10度ほども暖かくなるフクジュソウの花の内部は、さながらサンルームのようなもの。花が少ない季節だけに、花粉にありつける格好の餌場でもある。日光浴と食事を楽しんだハナアブは、体に花粉をたっぷりと付けてフクジュソウの花から花へと移動する。蜜を作る手間をかけずに花粉を虫に運ばせる、したたかな戦略と言える。