第81話 大いに笑え! それが、生きている喜び

 社会保障もないのに、不注意にも足やら頭やらをぶつけて悲鳴を上げることの多いトーニャの声は、この日の朝も響き渡っていた。

 なになに? またどこかでコケテ頭でも打ったの? とトーニャの様子を見に行くと、寝袋にくるまってカウチに寝そべり、コーヒーを飲みながら聖書を読んでいて、うっかりコーヒーを寝袋にこぼしてしまったようだった。

 彼女はかなり不器用なところがあって、そういったことがよくある。

「なんだ、寝袋か……、たいしたことじゃないわ」

 と思っていると、私はあることを思い出した。

 実は、あの救出劇には、後日談があるのである。

 怪我人をERに入れた翌日、私たちは再びトロバナ温泉に向けて出発した。

 樹氷の森を抜け、吹き飛ばされそうになるくらいの寒風が吹き抜けるドームのようなツンドラの丘を歩き、山を2つ越えた先の秘境、トロバナ温泉にようやく到着した。

 宿泊ができる小さなキャビンの中には、先にスキージョーで行った友人と共に、あの骨折した男性の犬も待っていた。

 すぐさま露天風呂に入りに行った。

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