「なぜそんなにたくさんシアン化水素がつくられるかということについては、このブラックホールの周りでガスが非常に高温に加熱されていることが原因だと。星間空間における分子の化学モデルがいろいろあるんですけど、それによると、非常に熱い環境ではシアン化水素がたくさん生成されると予測されていまして、それにのっとった形の結果になったと考えています。アルマ望遠鏡の高い性能で、理論と観測の結果の直接比較も可能となりつつあるのも大きなことなんですよね」

 つまり、ミリ波・サブミリ波で宇宙を見て、シアン化水素がほかの物質に比べて多いところを探せば、そこにブラックホールがあるかもしれない、ということなのだ。ブラックホール発見のためのよい指標となる可能性がある。

NGC 1097中心核近傍の想像図。超巨大ブラックホールから吹き出るジェットの衝撃波により加熱された周囲の分子ガス雲の中で、シアン化水素分子が大量に生成される様子が描かれている。(画像提供:東京大学)(画像クリックで拡大)

「実は、この観測自体は1時間。キャリブレーション(補正)などに少し時間がとられますが、合計でも2時間くらいでできたものなんです」と泉さんは教えてくれた。

 ごく短い時間で、ブラックホールがダストに隠れていようとも、意外なところにあろうとも、逃さず捉えることができる可能性が見えてきた。その意味で、今回の研究は、今後深まっていくであろうブラックホール研究に新たな視野を提供するものだ。泉さん自身、「ブラックホールと銀河の共進化」というテーマに惹かれているという。

(写真クリックで拡大)

この連載の前回の
記事を見る

この連載の次の
記事を見る