第21回 パンタナールで480頭の牛追い旅に出た(2)

 むかしのテレビ映画「ローハイド」に憧れていたぼくは、ひょんな成り行きでそれとほとんど同じようなカウボーイの牛追い旅で、最末端の手伝い新人として、ブラジルのカウボーイの一員に加えてもらえることになった。乗馬は世界各地でいろんな状況の馬旅を体験して鍛えていたが、仕事として480頭(前回の380頭の数字は間違い)のきびしい牛追い旅をけっこう大地に変化のあるパンタナールのルートでプロの足手まといにならないように、できればちゃんとした下僕役ぐらいになるつもりで最後までなしとげたかった。

 常に周囲の牛が逃げないように、さらにみんな同じ方向に進んでいくように最低自分の持ち場だけでもこまかく気を使い、急発進して牛の逃亡を阻止したり牛の周りをぐるりと回ったりと緩急をもって対応しなければならないから、思っていた以上にタイヘンなのだ。

 3時間ぐらいで休憩になる。そこはあまり立派とはいえない疎林の日陰だったが風に汗を乾かせるだけでも有り難かった。

 しかし、こういう旅は規律が厳しい、もうあと3分ぐらいシアワセのまどろみがほしいのに、というような気分のときにホルンが鳴り響き出発だ。

 ルートの地形はそれまでとたいして変わらず風下にいると480頭の牛たちの巻き上げる砂埃とのタタカイになる。

 カウボーイのネッカチーフは完全な実用品で、目の弱い人はゴーグルがあったほうが楽だろう。しかしゴーグル文化はまだ入っていないようでサングラスの人も少ない。

 パンタナールやメキシコのカウボーイは基本的に「強い」人々でないとできないのだろうなあ、ということを実感した。

(撮影:椎名誠)(写真クリックで拡大)

このたび椎名誠さんが“無責任編集長”を務める新雑誌「とつげき!シーナワールド!! 飲んだビールが5万本!」が創刊されました。くわしくはこちらのページをご覧ください。