こんなにうじゃうじゃいるのはなぜ? 野生動物が群れる理由とは

 厳しい自然界に暮らす野生生物たちは、それぞれに生き抜く術を獲得してきた。数多くの個体が集まって「群れ」を作ることも重要な生存戦略の一つだが、生物種によって群れを作る理由は異なるようだ。『群れるいきもの』(宝島社)の著者である斉藤勝司氏に、代表的な理由を挙げてもらった(Web編集部)。

百万頭がエサを求めて限られたルートを大移動

米国アラスカ州の北極圏国立野生生物保護区で繁殖したカリブーは、カナダのユーコン準州にある越冬地へ向けて大移動する。 写真=Paul Nicklen
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 北米大陸の北極圏に分布するトナカイ亜種の一つであるカリブーが群れを形成するのは、エサを求めて集団で移動するため。夏の間、アラスカ北極海沿岸の繁殖地に分散して生息しているカリブーは、ツンドラ地帯に自生するワタスゲなどの栄養豊かな植物を食べているが、寒い秋になって雪に閉ざされエサが得られなくなる前に、エサとなる植物を求めて南の越冬地に向けて移動を開始する。移動経路は限られる上に、繁殖地に分散していたトナカイは徐々に集まり、10万頭以上もの大きな群れを形成する。

 越冬地に到着したカリブーは平均すると12頭程度の小集団に分かれて、雪の下にあるコケなどを掘り起こして厳しい冬をしのぐ。そして、再び春になると北の繁殖地に向けて群れを形成して移動を始めるが、春の移動は雪原を行くため群れはより密集する傾向がある。

 同様にアフリカ中南部に分布するヌーもエサを求めて大集団で移動する。というのも、彼らが暮らす地域は雨季と乾季があるため、土地が乾燥し植物が乏しくなる乾季には、湿潤で植物が豊富な雨季や乾季でも比較的植物が豊富な地域に移動しなければならないからだ。最初は数10頭の小集団だが、徐々に合流して百万頭もの大集団を形成する。先を行くヌーによって踏み固められた方が歩きやすいため自然に列を作るようになり、その長さは数10kmにも達するという。

数万匹で逃げ惑い外敵の混乱を誘う

力を合わせて狩りをするバショウカジキ。 写真=Paul Nicklen
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 食うか食われるかの厳しい生存競争を繰り広げる自然界において、大きな肉食動物のエサとなる小型の生物は群れを作ることで、少しでも食べられるリスクを減らしている。このような理由で群れを作る代表格ともいえるのが、我々の食材としてもなじみ深いイワシだ。

 イワシの身体をよく見ると、頭から尾にかけて1本の線が走っていることが見て取れるだろう。これは「側線」といって人間の感覚でいえば、聴覚と触覚を併せ持った働きをしている。この側線を使ってイワシは水圧や水流の変化から前後左右上下にいる仲間の存在を感知して群れを作っている。

 もしイワシが1匹で泳いでいて、カツオやマグロに見つかれば、すぐに食べられてしまうが、数千、数万という数で大群を形成していれば、個々のイワシが狙われる確率はぐっと低くなるというわけだ。こうした効果は「希釈効果」と呼ばれ、イワシに限らず、群れをなす小型の魚が生き延びるのに役立っている。