第79話 絶句! 孤立無援の救出劇……

 幸い、私が腰で引いていた橇は知人から借りてきた頑丈な素材のもので、予備のロープも持っていた。

 私は、橇から荷物を降ろすと、道横の雪の上にドサリと置いた。

 ここで荷を置いて、代わりに彼を乗せて運び上げるしかないのだ。

 橇を彼の体の横に置くと、3人で、彼の体と地面の間に手を入れた。

「イチ、ニの、サン!」で、体を橇に乗せる。

 できるだけ水平に持ち上げなければ、更に骨折箇所にダメージを与えてしまいかねない。

 私たちは慎重に、彼の体を持ち上げようとした。

 けれど、大人の体は重い。

 声を合わせて、彼の体を橇に乗せた瞬間、それまで、耐えに耐えて、つらい顔を見せなかった彼が、はじめて激しい悲鳴をあげた。

 それは、私の人生の中で聞いたこともないような、恐ろしく身をもぎ取られるような悲痛な声だった。

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つづく

廣川まさき

廣川まさき(ひろかわ まさき)

ノンフィクションライター。1972年富山県生まれ。岐阜女子大学卒。2003年、アラスカ・ユーコン川約1500キロを単独カヌーで下り、その旅を記録した著書『ウーマンアローン』で2004年第2回開高健ノンフィクション賞を受賞。近著は『私の名はナルヴァルック』(集英社)。Webナショジオでのこれまでの連載は「今日も牧場にすったもんだの風が吹く」公式サイトhttp://web.hirokawamasaki.com/