射殺命令

 海賊たちはますます苛立ちを募らせていた。4月12日の日曜日、夜になって海賊の一人が米国の軍艦に向けて曳光弾を発射した。もう一人が船長の胸にカラシニコフを突きつけているのが見えた。ベインブリッジの司令官は、海賊が武器を使おうとしていると判断し、射殺命令を出した。

 軍艦の船尾には3人の狙撃手が身を潜ませ、それぞれが別々の海賊に狙いを定めていた。夜間照準器を使い、3人全員が標的を確実に狙える時を待った。駆逐艦ベインブリッジは比較的安定していたが、小さな救命ボートは上下に大きく揺れていた。2隻を結ぶ曳航用のロープは、少しずつ短く縮められていた。今や救命ボートは軍艦の船尾から40メートル以内に入っている。狙撃手たちはチャンスを待ち続けた。ついに、救命ボートの船室のドアの中に2人の海賊の姿が見え、縛り上げた人質を見張っている3人目も窓の向こうに見えた――狙撃手たちは同時に撃った。

 3人の海賊は頭を撃ち抜かれ即死した。

 それからシールズ隊員たちは曳航ロープを伝って救命ボートまで行き、フィリップス船長を救助した。船長は無傷だった。海賊のリーダーのアブドル・ワリムセはニューヨークに移送され裁判にかけられた。2011年2月16日、彼は有罪を認め、懲役33年9カ月を言い渡された。


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