追い詰められる海賊

 海賊は依然としてフィリップス船長の身代金200万ドルを要求していたが、米国側は強硬な姿勢を取った。要求について話し合うことさえ露骨に拒否した。海賊たちの置かれた状況はいよいよ絶望的だ。衛星電話で、周辺海域で略奪船を操る海賊仲間に連絡し、救援を要請したものの、米国の軍艦を目にした海賊仲間たちは怖気づいて近づけなかった。救命ボートの4人は孤立無援だった。

 海賊はその後、身代金の要求を取り下げた。自分たちの自由と引き換えにフィリップス船長を解放するという。米国側はこれも拒否した。耐えられなくなったのは、海賊のリーダーだった。米国側が小型船を派遣し、救命ボートに食糧を運んできたとき、仲間を捨てて小型船に飛び移った。

 赤道の太陽が照りつける中、救命ボートはやがて燃料を使い果たし、漂流し始めた。駆逐艦ベインブリッジの司令官は海賊に曳航を申し出た。海賊は受け入れざるをえず、ベインブリッジの乗組員が投げた長さ60メートルのロープを救命ボートに結びつけた。

 海賊にしてみれば、もう少し持ちこたえれば、海賊仲間を説得できるだろうという目算があっただろう。一方で、米国のオバマ大統領は、もしフィリップス船長の生命に危険が及ぶようなら、解放のため武力を使うことを承認していた。3日目の金曜日の夜、海軍特殊部隊シールズ(SEALs)の狙撃チームが海上にパラシュート降下し、ひそかにベインブリッジに乗り込んでいた。すでに、いつでも行動できる態勢にある。

『本当にあった 奇跡のサバイバル60』より(写真クリックで拡大)

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