ホームステッドでの滞在中、ウィルからの仕事の依頼は、いつもこんな感じでした。

 つまり、ひとつの仕事が終わろうとするとき、必ずといっていいほど絶妙なタイミングで現れ、次の作業を指示していくのです。

 ぼくの作業スピードを考慮した上で意図的に狙ったものなのか、それとも 偶然……だとしたら相当な嗅覚だと思いますが……どちらなのかは、わかりません。

 おもしろそうだと思って手伝い始めた仕事。

 実際、作業はおもしろく、手伝うのはまったく嫌ではありませんが、もう少しで区切りがつこうとするところで、次の作業を指示されると……なんといったらいいのか、すごく落ち着かない気分でした。

 たとえば山登りで、下から見て山頂だと思っていた場所に到達したら、そのずっと先に、本当の山頂が見えたときのような、がっかりした感じとでもいえばいいのでしょうか。

 そして、それが果てしなくくり返され、山頂はいつまでたっても遠ざかり、決して到達できない……そんな様子を想像してみれば、ホームステッドで長く滞在するために、ある種の精神的タフさが必要だということがわかるでしょう。

 <この調子なら、切りのいいところまでという考え方はやめよう……>

 そう思えるようになったのは、1週間の滞在も半ばを過ぎてからのことでした。

 じつはぼくは、この1週間だけでなく、これから先の数年に渡ってこのホームステッドに何度も通い続けることになります。

 その間、いろんな仕事を手伝いましたが、大工の技術がないので、主に頼まれたのは、薪割りや薪積みでした。

 ロッジやゲスト用の薪小屋、あるいは、ウィルの薪小屋へいって、何日間にも渡って、そこに高く積まれた薪を、ただひたすら右から左へと移動しました。

 新しく空いた場所に薪の補充をするのも、ぼくがよく任された仕事です。

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