まるでロデオのように「イーハー」と奇声を上げながら滑り下りていくと、下り坂が終わり平らになる場所で人が寝転がっているのが見えた。

 近づいていくと、それは、あの2番目に出発した、私とは初対面の男性だった。

「ハロー」

 私は、休憩でもしているのだろうと声をかけると、彼は倒れたままの姿勢を変えずに、私に言った。

「骨が、折れている……」

「え! まさか?」

 私は、びっくりしたのと同時に信じられなかった。

 と言うのも、この場所はすでに急な下り坂が終わって、平らになっている所だし、クロスカントリースキーは、さほどスピードが出ないので、ダウンヒルのような酷い転び方もしない。

 だから、打ち身か捻挫ぐらいなのでは? と思ったのだ。

「捻挫じゃないの?」

 私は、彼に言った。けれど彼は言う。

「折れているよ。私には分かる……」

 そうは言うけれど、もしも本当に骨折だとしたら、救助隊を要請しなければならないような、大ごとなのである。

 それに、日照時間の短いこの極寒の森の中で救助は困難を極めるであろう。それどころか、救助を待つ間にも、命にかかわってくるかもしれない。

 私は頭を抱えて、唸りながら考えた。

 いったい、どうすればいいのか……?

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つづく

廣川まさき

廣川まさき(ひろかわ まさき)

ノンフィクションライター。1972年富山県生まれ。岐阜女子大学卒。2003年、アラスカ・ユーコン川約1500キロを単独カヌーで下り、その旅を記録した著書『ウーマンアローン』で2004年第2回開高健ノンフィクション賞を受賞。近著は『私の名はナルヴァルック』(集英社)。Webナショジオでのこれまでの連載は「今日も牧場にすったもんだの風が吹く」公式サイトhttp://web.hirokawamasaki.com/

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