第78話 アラスカの新聞に私の名前が!

 朝早くに犬橇で出掛けて郵便物を取りに行ってきたトーニャが、私の顔を見るなり、

「フェアバンクスの新聞に、あなたのことが載っているわよ」と言った。

 えええ? そんなはずがない……。

 だって私、何も悪いことしていないもの。

 怪訝な顔でその新聞の記事を見てみると、確かに私の名前がフルネームで書かれてあった。

「ああ、あのときの……」

 すっかり忘れていたが、実は私は、あるアメリカ人男性の命を救った当事者の1人だったのだ。

 記事のタイトルは、

 A bad situation with a good ending(最悪な事態と良い終結)

 記事には、同じく救助に携わった友人とその男性へのインタビューを元に、2ページにも渡って、そのときの様子が詳しく書かれてあった。

 それを読んだトーニャの母親が、わざわざこの新聞を郵便で送ってくれたのだ。

 読んでいるうちに、私も記憶が鮮明に蘇ってきた。

 というのも、その出来事は、日本では考えられない、アメリカ社会特性のひずみと言うか、苦悩のようなものを目の当たりにするものだったからだ。

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