第4回 薬も遺伝子操作も使わない「情報医療」とは

「ハイパーソニック・エフェクトが作用する基幹脳の部分は、広範囲調節系としていろいろな心と身体の機能にかかわっています。ここがうまく働かないと、視床下部の機能異常を通じて内分泌系の異常を引き起こして、高血圧ですとか糖尿病とか、様々な生活習慣病の原因になりえたり、免疫系のバランスを崩してがんの発症を促したりすることもありうるわけです。アルツハイマー病の病状と密接にかかわるアセチルコリン神経系の機能低下などもあります。少し乱暴な言い方をすると、現代病の元栓となっているのが基幹脳ということもできるかもしれません。そこで、脳科学の先端的知見であるハイパーソニック・エフェクトで基幹脳を活性化させて、薬などの化学物質や、遺伝子操作などに頼らずとも、様々な現代病の予防と治療に有効な方法の開発を目指そうと。そういう健康科学の流れを、情報医療と名付けて提唱しているわけです」

「情報的栄養失調」で足りない部分、この場合、ハイパーソニック環境を補完することで、精神的身体的な健康に寄与できないか、ということ。本田さんが目下、大きな関心を抱いているのは、自殺との関係が深い、うつ病の治療だ。

「うつ病の患者さんに聴いてもらって、症状が改善するか興味を持っていますが、最初に安全性から見ていかないといけないんです。たとえば外来の患者さんに熱帯雨林の高周波を含んだ音を、20分とか40分とか聴いていただいて、何か悪いことが起こらないかどうかまず確かめています。もちろん音を聴く前後で心理検査をしたり、脳波の指標をはかったりします。その結果、あんまり問題はなさそうだし、ある効果は期待はできそうだというようなところまで、今きています」

 本田さんらが、外来の患者さんに熱帯雨林の音を聞いてもらっているリスニングルームを見せていただいた。森林の映像などを流しつつ、ゆったりと座り、リラックスして環境音に浸ることができるよう設計されていた。たまたま、機材のメンテナンスのために、充分な高周波音が再生できる環境ではなかったのが残念だったが、それでも充分にリラックスできた。

 もっとも、治療法としての確立はまだまだ先の話だ。

うつ病の治験に使うリスニングルーム。(写真クリックで拡大)