第4回 薬も遺伝子操作も使わない「情報医療」とは

 熱帯雨林の環境音が、ハイパーソニック・エフェクトを発現するということは、ことさら大きな意味を持つと考えられている。研究の推進力であり続けてきた大橋力博士は、熱帯雨林の環境音を「究極のハイパーソニック・サウンド」と位置づけた上で、このことがきわめて「深刻な問題」を提起しているとする。

〈というのは、[熱帯雨林環境を鋳型として構成された私たち人類の遺伝子と脳においては、ハイパーソニック環境こそスタンダードであり正常であり健全であると考えるのが妥当だ]、と考えなければならないからです。いいかえれば、ハイパーソニック・サウンドがほとんど存在しない近現代文明社会の都市環境というものは、ハイパーソニック環境を標準として構成された人類の脳機能を本来のレベルに維持できず、何らかの病理を必然的に招き寄せる一種の「情報的栄養失調」状態かもしれない、ということを意味するからです〉(「科学」2013年3月号)

 人間をふくめて大型類人猿はもともと熱帯雨林で進化したのだからということが前提で、ひょっとすると都市環境ではなく、熱帯雨林の環境の方が、人間の脳にとってベースであるかもしれない、という考えだ。人類の祖先が森の外の環境に進出して数百万年はたっているわけだし、今も森に住んでいる人間が、都市生活者より平均寿命がはるかに長いということもなさそうなので(どれだけ生きられるかというのは、心身の健康のひとつの指標だろう)、ぼくは大橋博士の説明は、ちょっとロマンチックすぎるかなあと感じる。しかし「情報的栄養失調」というキーワードにはどこかピンとくるものがある。

 一方、大橋博士と一緒に研究を続けてきた本田さんは「大橋先生は、芸術家なので」と笑みを浮かべつつも、この大きな問題提起にリアリティを感じているようだ。

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本誌2014年2月号でも脳研究にまつわる特集「先端技術で見えた脳の秘密」を掲載しています。Webでの紹介記事はこちら。フォトギャラリーはこちらです。ぜひあわせてご覧ください。

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