第3回 ピアノが高周波音を出さず、チェンバロが出すのはなぜなのか

「尺八とか琵琶とかいう邦楽器も、高周波音を強調する方向に発達してきたようです。また、人間の声ですけど、アフリカの狩猟民のコーラスですとか、グルジアやブルガリアの人たちの合唱曲などには、発声法のせいなんでしょうか、かなり含まれてますね。西欧のベルカント唱法はダメなんですが」(編集部注:グルジア合唱の例はこちら。ただし高周波音は含まず)

 歌の唱法の話は、チェンバロとピアノの違いと同様で、劇場に可聴域の音を響かせなければならないベルカント唱法と、それを気にする必要がなく心地よさを追究できる合唱との差なのかもしれない。

 そして「音楽」として究極のハイパーソニックを体感できるものは、やはり、ガムランなのだそうだ。

「チェンバロでは100キロヘルツくらいまでなんですが、ガムランは瞬間的には200キロヘルツまでの高周波音をふんだんに含んでいます。実験で使ったのはやっぱりそういう理由なんです。200秒間たっぷり聞いてもらって効果を計測しました」

 では、音楽を離れて、自然環境音ではどうだろう。芸能山城組の主宰者であり、アーティストである山城氏=大橋博士に導かれた高周波サウンド探しの旅は、まさにそちらの方向へも向かう。

「今、再生している音は、ボルネオの熱帯雨林で録音したものなんですよ」と、本田さんがインタビュー中に流していた音源の出所を教えてくれたのは、この話題の時だった。

「これは、大橋先生と、放送大学教授で都市工学が専門の仁科エミ先生などが中心になってやってきた研究です。都市環境には高周波音がほとんどないのに、熱帯雨林にいくと、環境音に高周波音がたくさんふくまれています」

本田さんはバリ島、ボルネオ島、カメルーンなどの熱帯雨林での調査も行っている。これはカメルーンでのひとこま。(画像提供:本田学)(写真クリックで拡大)

高周波音を含む音源の例。ただし視聴はできません。また、市販の音楽CDのため高周波音は含まれません(Amazonのページへ飛びます)。
CD「密林のポリフォニー ~イトゥリ森ピグミーの音楽」
CD「サカルトベロの奇蹟のポリフォニー」
CD「ブルガリアン・ポリフォニー(1)~JVCワールド・サウンズ」