第3回 ピアノが高周波音を出さず、チェンバロが出すのはなぜなのか

 ハイパーソニック・エフェクトでは、高周波音が含まれる音楽などをより心地よく感じるだけでなく、免疫をになうNK細胞が活性化したり、ストレスホルモンが減ったりする研究を紹介した。それが実際に、我々の健康にどれだけの効果があるかは未知数だが、どんな楽器、どんな音楽に、高周波音が含まれているかは知っておきたいのが人情だ。今回はそのあたりについて。

 まず、ハイパーソニック・エフェクトの発見の直接的な引き金になったのは、音楽CDの普及ともいえる。22.05キロヘルツより上の音をばっさり切り捨てることに、それ以前のアナログレコードの愛好者はもちろん、制作者側も違和感を抱いた人が多い。

 そして、この研究を牽引してきた大橋力博士は、まさに、アナログレコードの制作者サイドに立って来た人物である。音楽家・山城祥二として、パフォーマンス集団・芸能山城組を主宰し、音楽CD以前のアナログレコード制作の際にも、高周波音を意図的に取りいれ、いわば隠し味として使ってきた。可聴域をはるかに超えた50キロヘルツあたりを持ち上げておくと、音楽がより情感豊かに艶やかに響くというふうに。

 一方、今回お話をうかがった脳科学者の本田さんは、大学時代に、音楽家・山城祥二氏の弟子として芸能山城組に入門した経歴を持つ。その後のハイパーソニック・エフェクト研究の世界でも、大橋力博士(山城氏と同一人物)の指導を受け研究をすすめることになった。そのような縁の中で実現した成果だ。芸能山城組は、バリ島のケチャやガムランに注目してきた歴史があって、現地のガムラン音楽に豊富な高周波音が含まれていることを見いだした。だから、イメージングの手法を使った実験でも、呈示する音はガムラン音楽だった。

本田さんの部屋に飾られていたバリ島の絵。ケチャやガムランなど、バリ島の音楽には高周波音が豊富に含まれている。(写真クリックで拡大)

本誌2014年2月号でも脳研究にまつわる特集「先端技術で見えた脳の秘密」を掲載しています。Webでの紹介記事はこちら。フォトギャラリーはこちらです。ぜひあわせてご覧ください。

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