ピピッ、ピピッ、ピピッ、ピピッ……。

 午前4時にセットしておいた、腕時計のアラーム音が鳴りました。

 もぞもぞと寝ぶくろから抜け出し、ヘッドランプの光を頼りにロフトのはしごを下りると、机の上に置いてあったマッチ箱を手にとりました。

 そして、マッチを1本すって、壁のガスランタンに火を灯しました。

 シューッというかすかなガスの音とともに、マントルの放つまぶしい光に照らされた木の壁と床と天井が、暗闇の中にふわりと浮かび上がりました。

 水筒の水で喉を潤すと、頭がすっきりと目覚めていくのが分かりました。

すっかり冬毛に生えかわったカンジキウサギ。体温を奪われないためなのか、その場でただじっとしながら、口だけを動かして枝をかじっていた。(写真クリックで拡大)

 ストレッチをして体をほぐし、雨具の上着をきると、カメラを首から下げて、入り口へ向かいました。

 ボートハウスの入り口のドアを開けると、朝の空気が入ってきて、頬をひんやりとなでてゆきました。

 外はまだ暗かったのですが、東の空をみると、森のシルエットの向こうが、かすかに白み始めていました。

 北国の夏は、陽が沈むのもゆっくりなら、1日が始まるのも、とてもゆっくりとしているのです。

 こうして、ホームステッドでの撮影の日々がはじまりました。

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