第2回 脳の「ハイパーソニック・エフェクト」の可視化に成功
耳では聞こえていないはずの超高周波音を、我々がなんらかの形で受け取っていて、それに対して脳が応答するという「ハイパーソニック・エフェクト」も、90年代は「聞こえ方がよりよい」という主観的な尺度や、脳波を測定してアルファ波が強く出るようになる、といった水準で議論される段階だった。
それを勃興したばかりの脳のイメージングの手法で、その時、実際に何が起きているか可視化して示す。本田さんが参入した時点での「ハイパーソニック・エフェクト」研究の新たな展開は、まさにその点だ。そして、その結果、高周波音に脳がしっかりと応答していることを確認したわけだが、具体的にはどういうことだったのか。
「PET(ポジトロン断層撮像法)という手法で見たのは、脳のどの部分の血流が増えるかなんです。脳はエネルギーをためておくことができない器官なので、神経活動が活発になると必ず血流が増大してそこにエネルギーを送り込むわけです。その結果、視床下部を含む間脳や中脳が活性化することを確認しました。この部分は広範囲調節系と言いまして、要するに脳のいろんなところにつながっています。我々が快さを感じる時に出ているドーパミンなどに関係する報酬系もそうですし、自律神経、免疫や内分泌系にも関係しています。脳の働きの基盤となるという意味で基幹脳と呼んでいます」
高周波音を含む音源に触れたとき、活発に働くのが「基幹脳」であると特定され、その結果、アルファ波が増えるのだということがわかった。また、それに伴って、快感を生み出す報酬系回路として働く部位(前帯状回、内側前頭前野)も活性化することもわかった。
本田さんらが、2000年、20世紀最後の年に、アメリカの脳・神経科学論文誌に発表した論文は、まさにそういったことを明らかにした先端的なものなのだ。
と紹介するのは間違いではないが、実は「さらに先」まで一気に進んでいるのがこの論文の欲張りなところだ。

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