その途中、トーニャは歩きながら言った。

「今日は、オーロラが出るかもね~」

「え? オーロラ?」

 私は、ハッと思った。

 そう言えば、私はこのミンチュミナに来て以来、一度もオーロラを見上げようと思ったことがなかったのだ。

「オーロラ……」

「オーロラねぇ……」

 私は考え込んだ。

 なぜ私は、オーロラを見上げようとしなかったのだろう?

 なぜ私は、オーロラに興味を抱かない人間なのだろう?

 実は私は、今まで何度かオーロラを見ている。

 カーテンのように帯状のものも、真上から広がる放射状のものも、爆発的に活発なものも。

 緑色、緑白色、ピンクや虹色、赤っぽいものも。

 何度もアラスカに通っていたのだから、様々なバリエーションのオーロラと遭遇している。

 が、私はいつも、夕日や朝日を見るのと同じように、ごく当たり前の現象として、特に感動して足を止めることがなかったのだ。

 現にアラスカに住む人たちにとってオーロラは、特別見上げるものではないと言う。

 きっと私は、アラスカの友人たちと過ごしているうちに、彼らと同じような感覚になっていたのだろう。

 けれど、それではダメなのだ……、と私は思った。

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