ほとんど液体のスープなのにかぶりつこうとするものだから、鼻先がスープのなかに入って、しかもスープを吸い上げてしまって、悶え苦しんでいるものもいる。

 犬たちの口のまわりや髭にぶら下がっていた氷の粒やツララは、温かいスープや湯気で一気に解けていた。

 そんな犬たちの様子を見ていると、あの忠実に指示を聞いて頑張ってくれた賢い犬たちも、ドッグヤードに戻ってくると、なんだか3歳児ぐらいの幼稚園児のような感じがしてきて、なんとも可愛く、かけがえのないものに見えてきた。

「この子たちと、ずーっと一緒にいたいな……」

 私は、トーニャに呟くと、彼女も私を見つめて言った。

「そうでしょう……。だからやめられないのよ」

 犬たちが食べ終わると、それぞれの場所に戻してあげた。

 日没後の薄明かりも、そろそろ暗くなる。

 その前に、橇や犬たちのハーネス類の片付けをしなければならなかった。

 用具を入れているドラム缶の蓋を開けると、小さな粒がちらり、ちらりと降りてきたのに気がついた。

 見上げると、空を覆っていた薄雲がどこかにいってしまって、突き抜けるような青空が見えていた。

 降りてきたものは、雪ではなく、結晶のようなもので、手の平に落ちるとすぐさま消えた。

 少し暖かくなった日中の空気が、日没後に冷やされて、空気中に漂ったわずかな水分が凍って落ちてきているのだろう。

「さあ、私たちも何か食べて、寝よう」

 トーニャはそう言うと、片付けを済ませて、ロッジに戻っていった。

(写真クリックで拡大)

この連載の前回の
記事を見る

この連載の次の
記事を見る