私はアーセルの足のことが気になって、彼の指のない方の足をひっくり返してみた。

 彼の足の裏は毛が長く伸びていて、他の犬たちよりも多くの雪玉がくっついている。

 私はそれを見て思った。

 きっと、その雪玉がアーセルにとっては指や水かきの代わりなっていたのではないだろうかと。

 人間の足でも、親指は蹴りだすときに重要な役割をしているし、はじっこで小さく付いている小指でさえも、踏ん張るときには頑張っている。

 そう考えると、山や谷を越えて走る橇犬には無くてはならない存在である足指がないにもかかわらず、アーセルはあまり気にする様子もなく、他の犬たちとなんら変わりない。

 おっとりとしていて、何をするにもなすがままのアーセルの足を、あれやこれやと触りながらまじまじと見ている私に、トーニャは言った。

「アーセルはね、私のドッグチームには不可欠な子なのよ」

 性格が安定していて、頑張り屋なところが、血気盛んな若い犬たちのお手本になるのだそうだ。

 そう言うと、トーニャは、
「さあ、走り終わった犬たちに、ご飯をあげるわよ」と、足早に犬たちのドロドロスープを作るロッジ下の倉庫の方へと歩いていった。

 労いを込めた温かいスープを走ってきた犬たちにあげると、彼らは、ペロペロと舐めながら食べるのではなく、落ち着きなくガブリ、ガブリと口いっぱいに入れた。

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