私は、上から崩れてきた雪をひとつかみすると、がぶりと口の中に入れた。

 口の中に広がる冷たさに、私は気を持ち直して、

 もう少し!

 もう少し!

 と、橇を押し上げていく。

 もはや、アーセルや先頭の犬たちにエールを送るどころではなく、

「頑張れ! 私!」

「頑張れ! 私!」

 と、自分に言い聞かせることになっていた。

 先頭のリーダー犬たちが、ようやくへばりつくように壁を登り切っていった。

「よし、上がれ!」

「上がれ!」

 次の列、次の列とよじ登って、最後尾のアーセルも登り切った。

 しかし、ここで犬たちが登り切ったことに満足して足を止めてしまうと、下で橇を押し上げる私だけでは最後のひと上げができない。

 私は下から上の犬たちに、大きな声で叫んだ。

「ハイク!」まだ止まるな!

「ハイク!」まだ引け! 引け!

 犬たちもまた、この情況をちゃんと理解しているようで、踏ん張り続けていた。

 下で見ていたトーニャも、両手をつきながら這うように上がってきて、私と一緒に橇を支えてくれた。

 最後の瞬間は、犬たちが一丸となって引っ張り上げてくれた。

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