橇は空っぽで軽いとは言え、押し上げている私の腕はもう限界だった……。
本心を言うと、握り締めている橇のハンドルを手放してしまいたい。
犬たちには悪いけれど、もう限界の私を、橇と一緒に引き上げて……と思った。
けれど目の前で、雪にまみれながら、必死に困難に喰らいついている犬たちを見ると、すぐさま自分が恥ずかしくなった。
マッシャーである私が、犬たちの重荷になってどうするのだ。
少しでも犬たちに負荷がかからないように橇を押し上げなければ……。
私は再び、ぐぃっと腕に力を入れ、足元の雪を踏みしめた。
が、私の全身の筋肉は、もはや余力も少なく、すぐにも震えるように脱力していった。
しかも、追い討ちをかけるように、防寒服が内部の温度を上昇させていて、体がまるで石炭を燃やす蒸気機関車の炉のように、かっかと熱を発している。
密閉性が良いものだから、更に爆発寸前の圧力鍋状態である。
暑い……、
暑い……、
死にそうなくらいに暑い。